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東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学分野 下川 宏明 |
第62回日本心臓病学会学術集会(2014年)を担当させていただくに当たり、ご挨拶を申し上げます。
日本心臓病学会は、1970年に設立された臨床心音図研究会を前身として1987年に設立され、臨床心臓病学の発展・普及と次世代を担う若手医療関係者の教育を学会の目的として活動しており、現在約9,000名の会員を擁するわが国を代表する学会の一つです。わが国は、世界に先駆けて既に超高齢社会に突入し、今後の高齢化率も高いことが予想されています。これに、生活の欧米化が加わり、わが国では心臓病が増加しており、それに対する取り組みが求められています。
一方、心臓病診療の臨床の現場では、増加する心臓病患者への対応とともに、在院日数の短縮などの経営的な効率化がますます要求され、医療技術の高度化や電子カルテの導入等の機械化により、医師をはじめとする医療関係者が患者さんと向き合う時間がますます減少している状況があります。こうした現実に多くの医療関係者が危機感を持ちながら日常診療を行っている状況があり、私もその一人です。本来、医療とは、病める患者さんに正面から向き合い、十分な問診を行い、丁寧な身体診察を行うことが基本であるべきです。そして、必要最小限の検査と治療を基本とし、患者さんの自己回復を支援させていただくという謙虚な姿勢が大切であると思います。
今回、本学会の学術集会会長の大役をお引き受けすることになった時に、そのテーマとして、臨床心臓病学の原点に立ち返るという意味を込めて、「臨床心臓病学の真髄」という言葉を考えましたが、「真髄」に「精神」の意味も込めたいと思い、英語で「The Spirit of Clinical Cardiology」とさせていただきました。したがって、今回の学術集会では、本学会の原点に立ち返る意味で、「教育」に力点の一つを置いたプログラム構成にしました。その一環として、日本臨床心臓病学教育研究会(JECCS)との合同企画や臨床心臓病学の達人の先生たちからの教育的講演を企画しました。また、目に見える情報だけではなく、時として目に見えない機能的な心血管系の異常(例:冠攣縮、心筋虚血)も常に視野に入れて病態を把握する臨床心臓病学の重要性を再認識する企画も組みました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災から3年半が経過する時期に、被災地の中心となった宮城県仙台市で日本心臓病学会学術集会を開催させていただくことに、会員の皆様に心から感謝申し上げます。本学術集会が、会員の皆様にとって、臨床心臓病学の最新知識を学ぶだけではなく、その原点をもう一度考え直す機会になれば幸いです。多くの皆様のご参加をお待ちいたしております。