特別企画8
日本の臨床研究の現状と展望
小川 久雄 |
(熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科学/ 独立行政法人 国立循環器病研究センター) |
上島 弘嗣(滋賀医科大学・アジア疫学研究センター)
近年、日本の臨床研究における問題点が指摘され社会問題になってきている。しかし、日本人の治療にあたっては日本人のエビデンスが必須である。その理由としては、日本人と欧米人では病態や薬物に対する反応に明らかな違いがあるからである。冠動脈疾患において日本人で冠攣縮が多いこと、抗血栓薬に関して日本人と欧米人では反応の違いがあること、などである。遺伝子多型の面からも日本人と欧米人の顕著な違いが明らかになってきた。さらに医療環境もまったく異なる。近年、グローバルな大規模臨床試験が行われ、日本も参加することが多くなり、日本と諸外国の違いがより明確にわかるようになってきた。日本の臨床研究の特徴はきめ細やかさと考えている。日本からも世界に発信する多くの臨床研究が発表され注目されている。本シンポジウムでは、日本の代表的な臨床研究であるJ-RHYTHM Registry、CREDO-Kyoto Registry、NIPPON DATA80・90、CHART-2研究、JPAD研究、JAPAN-ACSについて解説していただき、今後日本の臨床研究が向かうべき方向の展望について討論していく予定である。できれば医学界のみでなく社会的な面からも討論していただければ幸いである。臨床研究にかかわる多くの方の参加と活発な討論を期待している。