特別企画5

利益相反について学ぶ

永井 良三(自治医科大学)
近年、臨床研究における利益相反が大きな問題となっている。利益相反は、公的な立場にある者が、自分の利益を得るよう図ることとされている。日本でこの問題が注目されるようになったのは、1999年に産学活力再生特別措置法(いわゆる日本版バイドール法)が制定され、公的研究費で行われた研究成果に対しても、研究者個人に知的財産権が認められてからである。臨床医は、基礎研究や臨床研究だけでなく、厚労省の承認審査、さらに医療現場での使用者として、薬剤開発のさまざまな局面で関与する。このため、基礎であれ臨床であれ、医学研究者には利益相反に関して特別な配慮が求められる。しかしながら、研究を推進する上で、利益相反が生ずることは避けがたい。利益相反の発生自体が問題なのではなく、どのようにしてこれを制御するのかが重要である。開示、法的規制、同意のあり方を、研究者と社会が協働して考えなければならない。
利益相反の概念は時代とともに変わる。本セッションでは、今日求められている利益相反の制御について、お二人の専門家から講演を伺う。