特別企画2
臨床研究の実施の基本
渡邉 裕司(浜松医科大学医学部臨床薬理学講座)
山崎 力 (東京大学医学部附属病院 臨床研究支援センター)
臨床研究は新しい医療技術や医薬品の開発に欠かすことの出来ないステップである。しかし残念な事に、コアジャーナルに掲載される臨床研究論文数を国際比較すると、わが国の順位は低下の一途をたどっており、さらに掲載された論文を撤回する事態も生じている。このような危機的状況を打開するためには、臨床研究のもたらす意義を再確認し、被験者保護およびデータの信頼性確保という基本に立ち戻る必要がある。一方、新薬の承認を得るために実施される臨床試験である治験の質は国際的にも極めて高いことが知られている。治験は薬事法・GCPに則り実施され、治験以外の臨床研究は倫理指針に準じているが、このような規制の差が上記の事態をもたらしたとの指摘も少なくない。罰則規定のない倫理指針での管理から脱却し、臨床研究にも法規制を持ち込むべきではないかという議論もすでに始まっている。さらに、現在統合が進められている疫学および臨床研究の倫理指針では、介入を伴う臨床試験に対してモニタリングと監査を求めることとなった。モニタリングと監査はGCPで定められていることであり、治験に新GCPが適用されるようになった1998年の状況と類似して、日本の臨床試験は大きな転換点を迎えている。本シンポジウムでは、日本から世界へ良質のエビデンスを発信し、世界の患者に貢献する役割を日本が担う、そのような状況を実現するために今われわれが成すべき事について議論を深めたい。