シンポジウム18
慢性期の予後を見据えた救急医療
木村 一雄(横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センター)
長尾 建 (駿河台日本大学病院循環器科)
循環器疾患救急医療は限られた情報の中で診断治療していくことが多く、当初は救命治療を最優先した医療が進められる。しかし、最終目標は長期予後の改善であり、いかにこの点を念頭に置いた治療法を早急に実行するかが重要である。長期予後の改善には良好な心機能の保持が最も重要な因子でありこれに対する本質的な医療とともに、この増悪因子の対策が治療のカギとなる。循環器救急の代表的な疾患であるST上昇型急性心筋梗塞において発症早期の再灌流の有効性は確立しているが、再灌流に成功したといえども必ずしも心機能を良好に保持出来るとは限らず、長期予後の改善には心筋保護が期待できる治療法を行う必要がある。また、梗塞責任血管の再開通が得られた例での残存病変の治療をいつ行うかについても長期予後を考えるうえで解決されていない問題である。さらに、自己心拍再開例における来院直後からのmild hypothermiaは神経学的予後の改善が期待でき社会復帰が可能となる例も増加しているが、いつから始め、どの程度行うかについても明確な指針はない。循環器救急では胸部症状を訴えてくる患者が多いがバイタルサインやその性状などは個々に大きく異なる。このため、診断・治療の遅れの弊害は長期により強く認められると考えられる。本シンポジウムでは救急医療の中で長期予後を念頭に置いた治療戦略をどのように行うべきかについて論じていただきたい。