シンポジウム3
大動脈瘤に対するステント治療の進歩
大木 隆生(東京慈恵会医科大学 外科学講座)
齋木 佳克(東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座・心臓血管外科学分野)
大動脈瘤に対する治療はステントグラフトの登場により大きく変貌を遂げた。ステントグラフト治療はその低侵襲性ゆえに急速に普及し、もはやステントグラフトなしには大動脈瘤の治療は語れない現状となっている。ステントグラフト治療の普及に伴い大動脈瘤治療も従来の生死・対麻痺の有無などというhard end-pointだけではなく、術後QOLが重視される時代となってきた。その一方で、我が国において企業製ステントグラフトの保険収載以後5年が経過し、その中期成績が明らかになってくるとともに、エンドリークやステントグラフト感染などに伴う二次治療の頻度が外科手術に比べて高い事や瘤の縮小が少ないことなどステントグラフト術の課題も明らかとなってきた。大動脈瘤に対する従来の人工血管置換術の成績も非常に安定したものとなってきた今、本邦において積み重ねられたステントグラフトのエビデンスに基づき、ステントグラフト治療を見直すには良い時期となったといえよう。こうした事を背景として第62回日本心臓病学会学術集会において、シンポジウム「大動脈瘤におけるステント治療の進歩」を行うこととなった。このシンポジウムにおいては、胸部、腹部、さらには胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の現状と課題を報告いただき、ステントグラフト治療の適応と限界について今一度議論を深めたいと思う。さらに現在のエビデンスをもとに、ステントグラフト治療が大動脈瘤治療の第一選択となりえるのか今後の展望について有意義な議論を行いたい。