シンポジウム10

重症心不全の治療の進歩

坂田 泰史(大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
小野 稔 (東京大学医学部附属病院 心臓外科)
重症心不全とは、症状が重く、医療機関に頻回にかかる必要がある症例と定義される。多くの症例では、「適切な」薬物治療が施されているにもかかわらず症状が重症化していると考えられている。よって、近年この分野の進歩は呼吸補助療法、心室頻拍・心房細動に対するアブレーション治療、植込み型除細動器、心臓再同期療法、そして補助人工心臓、心臓移植など非薬物治療によりもたらされることが多い。では、本当に薬物治療は適切に施されているのだろうか。確かに多くの症例ではβ遮断薬、ACE阻害薬が使われてはいるが、その効果を最大限に引き出すように使用されているだろうか。大規模臨床試験の非対象症例における心筋保護薬の使用にどのような意味があるか。利尿薬、強心薬など予後を改善しないと言われている薬剤について、適切に使用されているだろうか。このセッションでは、最新の非薬物治療の進歩をレビューするとともに、薬物治療の適正化、さらに非薬物治療の進歩に基づいた新たな薬物治療戦略の可能性、さらには非薬物治療の組み合わせによる上乗せ効果の可能性など、薬物・非薬物治療、言い方を変えれば、内科・外科の治療相乗効果をどう導き出すかについても議論していきたい。