シンポジウム4
抗血小板療法と抗凝固療法を必要とする患者の管理
木村 剛 (京都大学大学院医学研究科 循環器内科)
池田 隆徳(東邦大学医学部内科学講座循環器内科学分野)
虚血性心疾患患者の増加に伴って抗血小板療法を行う機会が増えている。治療として冠動脈に薬剤溶出ステントが留置された場合、抗血小板薬が二剤投与される。以前は特別な理由がない限り二剤を投与し続けることが多かった。しかし、近年では1年あるいは6カ月へと短縮される傾向にある。この背景として、虚血性心疾患患者では心房細動を合併することが多く、脳塞栓症の予防目的で抗凝固療法を行うことが多くなったことが挙げられる。周知のとおり、動脈系の血栓予防には抗血小板薬、心房あるいは静脈系の血栓予防には抗凝固薬を投与しなければならない。抗血小板薬に抗凝固薬を併用すれば、出血性合併症のリスクが増す。そのため、抗血小板薬を二剤投与している患者では一剤に変更、あるいは抗凝固薬を少量で使用するなどして対応しているのが現状である。心房細動に対する抗凝固療法については、最近では新規経口抗凝固薬が導入され、さらにこの問題は複雑化してきている。ガイドラインにおいて薬物療法の指針が示されているものの、確固たるエビデンスに基づいて記載したものではない。
本シンポジウムでは、抗血小板療法と抗凝固療法を必要とする患者の管理について、虚血性心疾患と心房細動に留まらず、末梢動脈疾患、深部静脈血栓症などの疾患を含めて、各施設の具体的な治療法を紹介していただき、現時点における両薬物療法のあり方について知識を共有できればと考えている。