シンポジウム7

感染性心内膜炎の診断と治療のパラダイムシフト

宮武 邦夫(医療法人 吉田小野原東診療所)
江石 清行(長崎大学病院 心臓血管外科)
感染性心内膜炎は的確な診断の下、適切な治療が奏功しないと多くの合併症を引き起こし、ついには死に至る重篤な疾患である。感染性心内膜炎の診断は、主に血液培養と心エコー図検査で行われてきたが、起因菌の遺伝子検出、経食道心エコー図法など新しい診断方法の有用性も報告されている。しかし、的確な診断がつけられないまま徒に時を浪費し、重篤な合併症を発症した後に専門医療機関に紹介されるケースも後を絶たない。まず、感染性心内膜炎の現状、各種ガイドラインに基づいた診療と問題点を明らかにし、感染性心内膜炎の最も大切な的確な診断、有効な抗菌薬の選択、合併症の早期発見、時宜を得た外科的治療の進歩について議論したい。特に、外科的治療を比較的早期に施行することが推奨されて、外科医の意見として急性期心臓手術が必ずしも感染を増悪させるわけではなく感染巣の外科的廓清が感染制御にも有効である。また早期の手術が人工弁を使用しない形成術の可能性を高める、さらには脳合併症を有する患者においても、脳合併症の再発や重症の心不全の危険度が高い場合にも心臓手術が可能であるという考え方が示されている。一方、強力な抗菌薬が使用可能になり、状況によっては内科的治療を継続することも再度見直されてきている。このシンポジュウムでは、内科医、外科医のみならず感染症専門家や画像診断医などを含め、感染性心内膜炎の診断と治療の進歩を明らかにする。