シンポジウム13
新規経口抗凝固薬(NOAC)をどう使いこなすか
山下 武志 (公益財団法人 心臓血管研究所付属病院)
井上 博 (富山大学)
約50年もの長い間、経口抗凝固薬として利用可能な薬物はワルファリンという単一薬物しかなかった時代が終わり、ワルファリンに代わる新しい抗凝固薬として、抗トロンビン薬のダビガトラン、抗Xa薬のリバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンが続々と開発された。これらの薬物はいずれもワルファリンのもつ限界を打ち破り、自由な食事、可能な併用薬の増加、不要なモニタリングと一定の処方量、短い半減期など、医師・患者の自由度を大幅に改善したといえる。しかし、華々しいともいえる大規模臨床試験の結果を基にしながら実際の臨床でこれらのNOACを使用し始めた今、私たちは全く何の疑問を持つこともなく、これらのNOACをうまく使いこなしていると言えるだろうか。心の中にいくばくかの不安や迷いを感じていないだろうか。現場でのNOAC使用経験を有する私たちは、すでに大規模臨床試験結果を語るだけの時代から脱却している。そして、重要な二つのギャップを埋めなければならないことに気づき始めている。それは、大規模臨床試験と臨床現場の差、ならびに集団データと個人の間にある差である。臨床試験と現場は異なる、集団データで個人をすべて語ろうとすることには限界がある・・・謙虚であれば当然気づくはずであろう。それらのギャップをどのように埋めていけばよいのか、様々な視点からの討論を行いたい。