シンポジウム8

Structural heart diseasesに対する治療の進歩

高山 守正(榊原記念病院 循環器内科)
澤 芳樹 (大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 心臓血管外科学)
本邦の主要学会でStructural heart diseases(SHD)の用語を最初に用いて6年間が過ぎ、ようやく疾患の概念が拡がりつつある。先天性心疾患、弁膜症、心筋症など構造そのものの異常が病態を決める疾患にあっては、構造異常の是正が治療であり、侵襲的外科治療がその主役を担って来た。この領域への最近10年間の経カテーテル治療の進歩は著しく、それまで外科手術がハイリスクで実施し難い患者や、より低侵襲での治療として経カテーテル治療が最近になり普及しつつある。先天性心疾患のうち比較的構造が単純な短絡疾患であるASD,PDAが本邦では経カテーテル治療の対象となり、さらに今後はVSD、脳梗塞の重大な要因とされるPFOが次の対象として注目される。弁膜疾患では開心術ハイリスクの大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)が臨床現場の治療選択の一つに加わり、全国への普及が始まっている。日本の超高齢者医療にどのように貢献していけるか、注目されるところであり、全例登録が進めばその役割がより明確となろう。僧帽弁逆流へのカテーテル治療edge to edge repairは米国でFDAの承認がH25秋におり、本邦での臨床試験開始も近い。心房細動における左心耳血栓の防止を目的とする左心耳閉鎖術は高齢者であっても抗凝固薬継続を不要にできるとされ、適用範囲は広い。さらに心筋症の一部も含め、SHDへの治療は新しい画像診断の展開なくして語れず、従来の担当科の垣根を超えたハートチームによる協力体制構築が治療の質を決める。フロントランナーの多数の応募を待つ。