日本心臓病学会・心筋生検研究会ジョイントシンポジウム

リバース・リモデリングへの挑戦 Ⅱ

佐藤 幸人(兵庫県立尼崎病院 循環器内科)
高野 博之(千葉大学大学院薬学研究院 分子心血管薬理学)
慢性心不全では、心室の肥大や拡大、収縮不全、拡張不全などが進行することが知られており、心筋リモデリングと呼ばれている。この過程ではミクロからマクロまで変性が認められ、心筋細胞の肥大、変性、脱落や間質の線維化を伴う。その背景には血行動態的負荷、交感神経系、レニン・アンジオテンシン系、炎症性サイトカインなどの液性因子が関与している。一方、リバース・リモデリング(reverse remodeling)とは、心筋リモデリングが心不全治療により心機能の改善と左室容積の縮小が得られた場合を指し、認められれば予後は良好とされる。心不全の臨床において、最終的に評価されるのは心血管イベントの抑制であるが、心筋リモデリングが改善するリバース・リモデリングは、心不全の代理指標の可能性が高いと考えられている。したがって、リバース・リモデリングへ到達させることは心不全治療の重要な目標の一つである。リバース・リモデリングは、薬物療法、特にβ遮断薬や、心臓再同期療法(CRT)の慢性効果として、さらには補助人工心臓によるbridge to recoveryなどでみられる。その機序については、細胞あるいは組織レベルでさまざまな検討が行われているが不明な点も多い。前回のジョイントシンポジウムでは「リバース・リモデリングへの挑戦」というタイトルでその病態や機序について発表していただいたが、今回はこの1年で得られた新たな知見をもとに、リバース・リモデリングに挑戦するための活発な議論を期待したい。