日本心臓病学会・日本集中治療医学会ジョイントシンポジウム
ICU/CCUにおける疼痛・不穏・せん妄の管理
布宮 伸 (自治医科大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座 集中治療医学部門)
山科 章 (東京医科大学 循環器内科)
CCUで患者管理に難渋することの一つに不穏・せん妄がある。たとえば、夜間に救急入院した高齢者の心不全患者は、血管拡張薬やNPPVで適切に治療すれば、症状は著明に改善し、翌朝には楽になったと笑顔が見られるようになる。これで大丈夫と思っていると、その夜、不穏となり、せん妄も伴い、NPPVを外し、ラインは抜去し、興奮のため血圧はあがり、高心拍となり、心不全が再び急激に悪化することがまれでない。やむをえず、鎮静を試みると、血圧が下がりショックに陥ることもある。
集中治療領域ではそういった問題点に以前から取り組んでおり、米国集中治療医学会では、2002年に「成人重症患者に対する鎮痛・鎮静薬の使用に関する臨床ガイドライン」を発表している。さらに2013年には、せん妄も加えて、痛み(Pain)、興奮(Agitation)、せん妄(Delirium)をあわせてPADと略称し、「2013PAD guidelines」を発表している。「重症患者をいかにうまく眠らせるか」から、「重症患者のいたみ、不穏、せん妄をいかに管理するか」にコンセプトがシフトしていることに分かる。日本集中治療医学会でも「2013PAD guidelines」に対応するように、日本バージョンJ-PADを作成しており、出版する段階に来ている。
循環器領域の重症患者もいかに鎮静するかではなく、いかに不穏・せん妄を管理するかの時代になっている。そこで、このジョイントセッションは、集中治療のこの領域のスペシャリストに加わっていただき、“集中治療とくに循環器重症患者におけるPAD管理を学ぼう”という主旨の企画とした。J-PAD作成班の班長をされた布宮先生に最近のPAD管理の潮流をKey note lectureとして講演いただいた後、PAD guidelinesの意義を長谷川隆一先生に、チーム医療の立場から看護師の茂呂悦子先生に、リハビリテーションの重要性について高橋哲也先生に、循環器疾患患者におけるPADについて山本剛先生に講演をしていただいたのち、循環器疾患患者のPADにフォーカスをあてたホットなディスカッションをしたい。