JCC-JECCS 共同プログラム セッション2
「臨床における3 つの言葉を学ぶ心臓病患者シミュレータ」
心臓病患者シミュレータ(イチロー)を使用した症例検討:症例の提示と心臓診察の実際
木野 昌也(医療法人仙養会 北摂総合病院/公益社団法人臨床心臓病学教育研究会)
心臓病診察の醍醐味は、実際の患者さんを前にして、主訴から始まる病歴を基に患者の訴えを詳細に分析し病態の根源を推測。さらに視診、触診、聴診から得られた身体所見により病態の把握をさらに精緻なものとして仮説を立て、鑑別診断をする。そして胸部X線、心電図、心臓超音波検査などの検査所見により診断を確定していくプロセスを体験することにあります。つまり伝統的な心臓診察の実践こそが臨床医学の最も興味深いところといえます。臨床教育の現場では、このプロセスを実際の患者さんを前にして複数の医師で共有することが伝統となっていました。しかし患者意識の変化と患者数の激増、医療制度の変革、さらに種々の高度診断機器の登場により、伝統的な診察法とベッドサイド教育の実践が大変困難となっています。時間のかかる詳細な病歴聴取や綿密な身体診察が日常の診療現場から消え去ろうとしています。しかしどんなに医療が進歩しても、医療が人を対象とした人間科学である以上、伝統的な診察の重要性が無くなるものではなく、むしろ複雑で高度化した社会であるが故に、より人の機微に触れるような診察法が重要になると思われます。今回、心臓病患者シミュレータを使用し、現在の臨床現場では実践が困難となったベッドサイド教育を再現したいと思います。実際の症例を提示し、その身体所見を心臓病患者シミュレータで再現します。さらに胸部X線、心電図、心臓超音波検査と検査をすすめながら、考えられうる病態について参加者とともに考えたいと思います。