コントロバーシー5
HFpEFは独立した疾患概念か?HFrEFの病前状態か?
久保田 功(山形大学医学部第一内科)
心不全患者の30-50%は左室収縮能が保持されていることが報告され、心不全症状の出現に左室収縮能障害と同様に、左室拡張能障害が大きく関与していることが明らかとなった。近年、左室収縮能が低下した心不全をheart failure with reduced ejection fraction (HFrEF)、左室収縮能が保たれた心不全を、HF with preserved EF (HFpEF)と分類されるようになった。HFrEFおよびHFpEFを単一の連続した疾病スペクトラムと捉え、収縮不全と拡張不全のどちらかが極端な表現型となっているのに過ぎないのではないかという概念が提唱されている。しかしその一方でHFpEF患者は、女性、高齢者、高血圧合併、糖尿病などの心血管危険因子の保有が多く、独立した疾患概念とも考えられている。これまでHFrEFを対象に多くの大規模臨床試験が行われ、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬およびβ遮断薬は、慢性心不全の基本治療薬として確立している。しかしHFpEFを対象に行われた大規模臨床試験において、これらの薬剤の有効性は示されず、未だ標準治療の確立が待たれる状況にある。このセッションでは2人の演者にHFpEFは、独立した疾患概念であるという立場と、HFrEFに至る病前状態であるという立場で、HFpEFに関する最新知見について、討論して頂く。