コントロバーシー3
冠動脈病変の評価はCTで十分か?
南都 伸介(大阪大学大学院医学系研究科先進心血管治療学寄附講座)
選択的冠動脈造影法(CAG)は、1958年ソーンズ博士によって考案され、それまで、心電図に頼っていた虚血性心疾患の診断精度が飛躍的に向上した。その後、機器の発達やジャドキンス博士による専用のカテーテル形状の考案により、検査がより迅速かつ容易に実施可能となり、冠動脈病変の最終診断法としての位置を確立した。
本邦においてコンピューター断層撮影法(CT)の普及が始まったのは、1970年代後半からである。時間分解能の低さから拍動している心臓の表面を位置する冠動脈を描出することは困難であり、石灰化の存在から冠動脈病変を類推するにとどまっていたが、多列CTの急速な発達により、冠動脈造影に匹敵する画像がCTで得られるようになった。
CTはその陰性的中率の高さから、冠動脈病変のスクリーニング検査として大変有用であることに異論をはさむものはないが、高度石灰化例やステント留置例では、冠動脈造影に比較してどこまで正確な病変評価が可能であるかは問題点の一つである。一方、冠動脈造影は管腔の評価に過ぎず、血管壁性状の評価は不可能であり、また撮影方向もCTに比較して大きく制限される。
本セッションでは、心臓CTの立場から三井記念病院循環器内科の田邉健吾先生に、CAGの立場から北光記念病院の野崎洋一先生にご講演いただき、二つのモダリティの利点欠点を明確にしたうえで、いかに両者を冠動脈病変の正確な診断に役立てられるかを議論したい。