コントロバーシー2

NOACかワーファリンか?

山下 武志(公益財団法人 心臓血管研究所付属病院)
非弁膜症性心房細動における脳卒中予防の選択肢が広がっている。ワルファリンか、NOACかという単純な問題にとどまらず、NOACのうちどれを選択するかというかなり難解な質問に答える必要が生じてきた。選択肢が多いということは一見良いように見えるが、実際は選択の問題を困難にする。人は二つのものの比較しか得意ではないからである。三つのものがあると、比較の組み合わせが増加するために3回の比較が必要になる。4つのものからの選択は6回の比較が必要になり、人間の能力を超えてしまう。だからこそ、料理のメニューは、「松」、「竹」、「梅」など3要素から構成されることが多い。加えて、選択後の投与対象は、「心房細動」という十羽ひとからげにできない「多様な疾患」である。薬物と患者のマッチングは多様過ぎ、類型化できない。
ワルファリン単独の時代が終わり、ワルファリンと複数のNOACという新しい時代を迎え、私たちはまだ十分に適応できずにいる。ここでは、まず問題を単純化することから出発することが早道だろう。ワルファリン、NOACの両者に精通し、本邦ではベストな二人という論客に、極端な立場から解説してもらい、議論を深める。ワルファリンか、NOACか、それを極端な立場から考えるという、単純化の図式は複雑な問題を解くための第一の公式といえる。聴衆者には、その第一の公式を知ってもらい、それを複雑な現場に対処するための知恵としていただきたい。