企画趣旨
シンポジウム「血行再建の適応を見直す」
座長: 福田 宏嗣(獨協医科大学)
阿古 潤哉(北里大学)
安定冠動脈疾患の血行再建は常に議論の的となってきた。2007年のCOURAGE試験では、比較的軽症の冠動脈疾患患者の予後はPCIと内科的治療に大きな差がないことが示された。昨年発表されたISCHEMIA試験では、中等度以上の心筋虚血のある患者を対象に行われた。この臨床試験で、CABGとPCIを含む血行再建術を先行させる治療法は、内科的治療を先行させる群と予後が変わらないという結果であった。安定冠動脈疾患治療の選択に大きなインパクトを与えるはずのISCHEMIA試験を、まずはどのように解釈し、さらに日常臨床を変えていく必要があるのかなどを議論したい。
シンポジウム「HFpEFの病態と治療の新展開~one-size-fits-allからの脱却~」
座長: 竹石 恭知(福島県立医科大学)
安斉 俊久(北海道大学)
左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)は、加齢とともに増加する様々な併存症を背景として、血管内皮機能障害や微小血管炎症が生じ、左室拡張機能障害を主体とした多様な臨床病型を呈する。これまで行われた大規模臨床試験では、いずれも予後を改善するには至っていない。複雑な背景を持つ集団に対しては、こうしたone-size-fits-allの病態のとらえ方からの脱却、治療の新展開が求められている。近年、機械学習(フェノマッピング)を用いて、詳細な臨床情報、心電図、心エコーなどのパラメータからHFpEFをリスク層別する試みが行われている。HFpEFの予後改善に向けた個別化治療の可能性について議論を深めたい。
シンポジウム「心不全に合併する不整脈のマネージメント」
座長: 中野由紀子(広島大学)
坂田 泰史(大阪大学)
心不全症例には、様々な上室性,心室性不整脈が合併する.心房細動は心不全の増悪因子であり、心不全症例の多くに心房細動を合併し両者は密接な関係にある。また、心不全症例の多くに心室不整脈が合併し重要な予後規定因子である。従って、慢性心不全症例における不整脈管理は,生命予後改善のためにも重要な課題である。心不全合併心房細動症例においてもアブレーション治療の有効性が認識され、致死性不整脈に対しては、植込み型除細動器(ICD)を中心としたデバイス治療が予後改善治療として位置付けられている。最近は様々な新規心不全治療薬も使用できるようになって来ており、今後心不全が急増していく中で、非侵襲的・侵襲的ストラテジーを用いて、いかに心不全に合併する不整脈をマネージメントしていくかをテーマとしてディスカッションを行いたい。
シンポジウム「重症下肢虚血に対する最新治療」
座長: 石原 正治(兵庫医科大学)
小林 欣夫(千葉大学)
重症下肢虚血は予後不良であり、高率に下肢切断に至る。高齢化、生活習慣の悪化による糖尿病を含めた生活習慣病、透析患者の増加により、重症下肢虚血患者が増加しており、これに対する治療が重要な課題となっている。重症虚血肢に対しては、フットケア、疼痛緩和、下肢切断に対するリハビリテーションならびに精神面でのケアなど、集学的なチーム医療が必要である。また、近年進歩を遂げている膝下動脈より末梢の病変に対する血管内治療も大きな役割を果たしている。さらには、HGF plasmid療法や脂肪幹細胞治療など、日本発の先進医療も有用な治療となっており、本シンポジウムではこれらについて討議したいと考えている。
シンポジウム「肺高血圧診療の現状と未来~レジストリ研究から見えてきたもの~」
座長: 大石 充(鹿児島大学)
土肥 薫(三重大学)
肺高血圧症では、新たな肺血管拡張薬の登場、初期併用療法の導入、バルーン肺動脈形成術の確立など治療戦略の進歩により、その診療は劇的に変化し、長期生存が期待される疾患となった。一方で、多様な原因及び病態が存在するため、その鑑別診断と治療法の選択は容易ではないことも認識されている。本邦において、肺高血圧診療に関する複数のレジストリが開始されており、データが集積されつつある。これらのデータを解析することにより、現状の診療における課題を明確にし、今後の方向性を探ることが可能である。本セッションでは、最新のレジストリデータを通して肺高血圧診療の実際について議論をし、肺高血圧症の各病態に対する理解を深め、今後の更なる診療の進展につなげたい。
シンポジウム「循環器疾患予防のリスク管理の現状」
座長: 平田 健一(神戸大学)
辻田 賢一(熊本大学)
1960年代猛威を振るった脳血管障害、特に脳出血に対して塩分制限・降圧治療が血圧低下と死亡率低下をもたらしたが、近年その主たる危険因子である高血圧の治療率の向上、喫煙率の低下にもかかわらず,一貫して心疾患死亡率の増加が認められる。わが国の心血管疾患を予防するためには、血圧はもとより肥満や糖尿病とともに脂質異常症や慢性腎臓病等を包括的に管理することが重要である。加えて、アルデヒド脱水素酵素2変異などの遺伝因子を増悪させる環境因子としての喫煙、さらには、黄砂やPM2.5といった環境要因も心血管疾患リスクを増大させるというエビデンスも蓄積されてきた。循環器病対策基本法が実効のphaseに入った今、本セッションでは、近未来の循環器疾患予防精緻医療も視野に最新エビデンスを総括したい。
シンポジウム「心臓リハビリテーションの有効性と実施促進を検証する」
座長: 藤田 英雄(自治医科大学附属さいたま医療センター)
藤野 陽(金沢大学)
心臓リハビリテーションは心血管病の進展予防・予後改善への有効性が確立しているにもかかわらず、その普及は不十分である。
超高齢社会と医療資源の偏在を背景としつつ心不全パンデミックを迎えるわが国で、高齢者に適したリハビリテーションとはいかにあるべきか、普及を促すためにどうするべきかについてのディスカッションを行いたい。更にはコロナ禍で集合形式の指導が困難な状態が続いても継続できる方法の模索についても議論したい。チーム医療の構築の観点から、医師、コメディカルから広く演題を募集する。
シンポジウム「長寿社会における腫瘍循環器医療」
座長: 吉村 道博(東京慈恵会医科大学)
泉 知里(国立循環器病研究センター)
社会の高齢化に伴いがん患者は経年的に増加傾向であるが、がんの早期発見および治療法の進歩によりがん患者の予後は改善している。一方で、抗がん剤による心毒性やがん患者における心血管系疾患に関する報告がみられるようになり、がんサバイバーの死因として心血管系疾患が多いことがわかってきた。つまり、社会の高齢化とがん治療の進歩により、両方の病態をもつ患者は増加している。このような状況から、がん専門医と循環器医が連携して患者を診療していく体制が必要となり、「腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)」が注目を浴びているが、臨床の現場における対処は施設ごとに様々であり、系統だった指針がないまま手探りで診療を行っているのが現状である。このセッションでは、Onco-Cardiologyの現状、そしてこれからのあり方について、みんなで議論したい。
シンポジウム「循環器疾患と慢性炎症、臓器連関」
座長: 北岡 裕章(高知大学)
南野 徹(順天堂大学)
現在、疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現しようとする国家プロジェクトとして、Moonshotプログラムが開始されようとしている。その中でのキーワードはまさに、循環器疾患や慢性炎症、臓器連関とされている。組織における慢性炎症は、細胞間コミュニケーションを介して波及し、さらに臓器間コミュニケーションといううねりを形成することで、循環器疾患の発症・進展に関与していることが明らかとなってきた。本シンポジウムは、これら3つのキーワードを結ぶ新たな循環器疾患病態メカニズムの解明や、それらを標的とした新規循環器疾患治療の開発などについて議論したい。
シンポジウム「心臓病における個別化医療・先制医療」
座長: 清水 渉(日本医科大学)
家田 真樹(筑波大学)
個別化医療とは、ゲノム情報やさまざまなバイオマーカーなど、患者一人一人の体質や病態に合わせて最適な医療を提供することであり、先制医療とはそのような情報に基づいて将来起こりやすい病気を発症前に診断・予測し、介入するという予防医療である。現在、がん領域では各個人の情報に基づいた病型の細分化や治療薬の選択などに個別化医療が臨床応用されている。一方、循環器領域でも遺伝子型やバイオマーカーに基づく予後予測など、様々な知見が蓄積してきているが、臨床応用は今後の課題である。本セッションでは心筋症、不整脈、動脈硬化の各領域における個別化医療・先制医療の現状と今後の展望について議論を深めたい。
シンポジウム「地域医療連携と循環器医の働き方改革」
座長: 田邊 一明(島根大学)
桑原宏一郎(信州大学)
現在、我が国の地域医療においては、少子高齢化の進行、医師の偏在、新専門医制度など多くの課題があり、病院機能の再編などを含めた地域医療構想が議論されている。本セッションでは将来を見据えた地域医療連携の進め方、循環器の医師の働き方改革などについて議論したい。
シンポジウム「侵襲的治療に画像診断を生かす」
座長: 陣崎 雅弘(慶應義塾大学)
石津 智子(筑波大学)
近年の循環器疾患の開心術、カテーテル治療の進歩により、治療選択肢が大きく広がっている。個々の患者に対する最善の治療戦略を立てる上で、画像診断には多くの期待が寄せられている。このような時代の新しい要請を背景として、各心血管イメージング法の発展もめざましい。本シンポジウムでは、循環器疾患の侵襲的治療の術前、ならびに術中に、どのように画像診断法を選択し、どのような所見に注目し活用するかについての議論を深め、さらなる治療成績の向上につなげたい。心エコー、CT、心臓MR、核医学など多様なイメージングの視点から広く演題を募集する。
チーム医療セッション「心不全患者の地域連携」
座長: 衣笠 良治(鳥取大学)
吉田 俊子(聖路加国際大学)
心不全患者は年々増加し、患者の高齢化も顕著である。高齢心不全患者の多くは併存疾患を有し入退院を繰り返しており、生活の仕方が病状を左右する。身体機能、心理、認知機能、社会的側面などを含めた包括的なアプローチが重要であり、高齢心不全患者への適切ケアを行うには、患者の生活と療養を支える地域の医療・介護スタッフとの連携が不可欠である。本セッションでは、「心不全患者を地域で診る」ために必要な病院ーかかりつけ医ー地域の医療・介護スタッフとの連携の在り方について、各地域の多職種による取り組みを紹介していただき、その現状と課題を議論する。
チーム医療セッション 「効果的・効率的な教育システムを考える」
(すべて指定演題となり、公募はありません。)
座長: 木田 圭亮(聖マリアンナ医科大学)
池亀 俊美(榊原記念病院)
心疾患患者に対する教育、ならびに医療スタッフ育成のための教育は、チーム医療に欠かせない。特にチーム医療の要である心臓リハビリテーション、心不全を中心とした教育システムについて本シンポジウムでは、各学会における取り組み、現状の課題、そして今後の展望について講演いただき、働き方改革時代を迎え、効果的、効率的で継続性の高い教育システムについて議論する。また、COVID-19により対面での教育、指導などができない中でのYouTubeやZoomを活用した教育のあり方について紹介し、運用方法、新たな課題などを情報共有したい。
若手企画「ここがヘンだよ、ガイドライン」
企画者:末永 祐哉(順天堂⼤学)
我々の⽇常診療は多くのデシジョンメイキングによって成り⽴っているが、その1つの拠り所となっているものに診療ガイドラインがある。現在⽇本循環器学会からは多くの疾患に対するガイドラインが発⾏されており、循環器内科のみならず⾮循環器内科医を含む多くの医師が参考にしている。その⼀⽅、ガイドラインはこれまでの臨床的エビデンスをもとにあくまで⼤きな⽅向性を決める指針として策定されている背景から、実臨床の中で実際の患者に適応させるときにはそのまま適応できない事、時にはガイドラインの記載が実臨床と合わない、と感じることがあることも事実であろう。
本セッションでは⽇々の臨床現場において、臨床医が現⾏のガイドラインに疑問を感じるテーマを2つ選び、ガイドライン策定の⽴場、およびガイドラインを参照している臨床医の⽴場からそれぞれの意⾒を述べていただき、議論したい。そして従来のエビデンスをどう考えるか、より現在の実臨床に即した推奨はどうすべきか、についてオーディエンスを含めて意⾒を交わしたい。
若手企画「循環器疾患の⾼齢患者に対し治療のwithdraw,適応無しの判断はどのように⾏うか」
企画者:渡邉 雅貴(みやびハート&ケアクリニック)
岩崎 正道(兵庫県⽴淡路医療センター)
本邦では空前の⾼齢化社会を迎える中で医療費削減が叫ばれて久しい。
⼀⽅で実際の医療現場、特に循環器疾患の⾼齢患者治療においては、過剰な医療が⾏われていないであろうか。この背景には、患者の希望(ゼロリスクを⽬指す)や出来⾼払い制度、新規検査治療への期待、コスト意識の⽋如や防衛医療(念のため)といったものが存在する。しかしながら、求められるべきは『医療者と患者が対話を通じ科学的裏付(エビデンス)を有し、患者にとって真に必要で、かつ、副作⽤の少ない医療』つまり“賢明な選択;Choosing Wisely” である。そこで、今回のセッションでは、循環器疾患の⾼齢化治療における“賢明な選択;Choosing Wisely”を明確にするため、薬物治療(⾼齢者へのDOAC投与や⼼不全標準的治療の減薬)と、⾮薬物治療(⾼齢者ASにおけるTAVR⾮適応)といった斬新な切り⼝で、魅⼒的な論客と共に、問題提起にとどまらず解決型のデスカッションを展開します。
⽇常臨床でのわだかまりを科学的に理解し、明⽇の診療へfeedbackができる90分間となっておりますので、是⾮、皆様のご参加と活発な議論をお待ち致しております。
若手企画「核⼼に迫る⼼不全薬物治療の真髄」
企画者:⽊⽥ 圭亮(聖マリアンナ医科⼤学)
新時代を迎えた⽇本では、⼼不全の薬物治療も新薬の登場で新時代を迎えることになります。この10年、臨床⼼不全は急性⼼不全のクリニカルシナリオ、Nohria分類、多職種介⼊の⼼不全チーム、新規⽔利尿薬トルバプタンなどで脚光を浴び、2018年3⽉に急性・慢性⼼不全診療ガイドラインの改訂を筆頭に2020年3⽉に⼼アミロイドーシス診療ガイドラインまで、現状の⽇本の⼼不全に合わせたステートメントやガイドラインが⽴て続けにあり、⼼不全に関する診療が⼤きく変化しました。
⼀⽅で、新薬の開発や治験を含めた創薬は膨⼤なコスト、時間、労⼒をかけてようやく⽇の⽬を⾒るわけですが、発売後は臨床医が臨床研究を通じてエビデンスを構築していきます。しかしながら、どうしてもエビデンスと実臨床には乖離が⽣じるわけで、実臨床でその薬剤を⽇本らしく上⼿に育てていく、育薬という作業が、⼿にした新薬がより強⼒な治療⼿段になってくれることでしょう。
本企画では、ただ単に薬剤が効いた、効かないということではなく、多⽅⾯からの視点で、⼼不全に関する薬剤について、その薬剤のストライクゾーンとは何か、その薬剤を使う意義を考える時間と場を、ディベートを通じて提供していきたいと思います。
若手企画「なぜ臨床医が基礎研究をするのか」
企画者:清⽔ 逸平(新潟⼤学)
野村征太郎(東京⼤学医学部付属病院)
なぜ我々は基礎研究をするのか。その意義や課題について実体験に基づき⼤いに演者に語っていただく。サイエンスのパートのみでなく、医局や研究室、国内外の学会及び研究会、海外留学等でのエピソードや出会いも紹介いただき、⼀⼈でも多くの若⼿が基礎研究に興味を持つような熱いセッションとしたい。
若手企画「循環器医のキャリアパス〜仕事の流儀と⼈⽣の道標〜」
企画者:奥村 貴裕(名古屋⼤学医学部附属病院)
本⽥ 怜史(国⽴循環器病研究センター)
世界に類をみない⾼齢社会の中で、循環器疾患を抱えた患者は急増している。同時に、循環器医に求められる役割も多様化しており、アイデア次第で、さまざまな活躍の場が期待される。このセッションでは、基礎研究医、医系技官、画像専⾨クリニックの開業医、聴診器開発会社の起業医、製薬会社勤務医など、ご活躍歴のある先⽣⽅に、⾃らの⼈⽣の分岐点、仕事の流儀、後進に送るメッセージなどを紹介いただき、循環器医のキャリアパスについて双⽅向的に議論したい。特に、新しいことにチャレンジしたいと思っている循環器医、将来的ビジョンが描けず困っている若⼿〜中堅の循環器医に積極的に参加し、議論していただきたい。時代のニーズを読み、新たな道を開拓された先駆者たちの遺伝⼦を感じ、医師⼈⽣の道標としていただければ幸いである。